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2012年11月4日 - 2012年11月10日

2012年11月 7日 (水)

官僚の説明責任・意識改革?

鈴木宗男・佐藤優両氏の対談集である『北方領土「特命交渉」』(講談社 2006年)にこんな話が出てきます。

P.57
鈴木 それにしても、当時の駐ソ連大使枝村純郎さんにはあきれてしまった。「外交は外務官僚の専権事項だから、政治家が口を出す話ではない」という古い考えに凝り固まった人間だったので、何をいっても動こうとしない。
佐藤 枝村さんといえば、自民党の外交部会で浜田幸一さんにこっぴどく叱責されて話題になったことがありますね。
鈴木 自民党の外交調査会長で自民党日ソ友好議員連盟会長だった村田敬次郎先生が、「われわれ政治家もソ連にいって話をしてこようじゃないか」と発言したら、枝村さんが「外交は外交官がやるものです。政治家が口を挟むべきものではありません」とやった。「この野郎! ふざけるなっ。何様のつもりだ!」という怒声が起こって、険悪な雰囲気になりましたよ。

 ちょっと信じられないような話です。
 社会科で「内閣」とか「議会」とかの仕組みを習ったばかりの小学生だって、枝村の言い分がおかしいことは分かるんじゃないでしょうか。

 戦前に行なわれた「統帥権の干犯」論が思い出されます。
 確かに、大日本帝国憲法では「外交大権」は天皇に属しており、「外交官」がその「大権」を代行する形になっていました。(ただ、これもあくまで形式上のものだというようなことを――まさにこの「統帥権干犯」論争の中で――浜口雄幸が答弁しています)

 百歩ゆずって、戦前の外交官が天皇に対してのみ責任を負っていたのだとしてみましょうか。
 戦後の憲法では、もちろん「外交大権」なんてものはなく、天皇は政治に関わらない。外交官は、外交に権限を持たない天皇に対して「責任」を持つ必要はなくなりました。
 その上で、外交が――枝村純郎の言うように――外交官の「専権事項」で、政治家が介入するべきでないとしたら、外交官はいったい誰に対して「責任」を持つというのでしょうか。
 誰に対しても「責任」など持たず、自分の好き勝手にやっていいことになるではありませんか。

 政治家が自らの判断で動くということはあり得ます(現在、その最悪の例を目の当りにしているわけですが)。日々の行動のすべてに対して、国民の判断を仰ぐのは不可能ですから、これは仕方ありません。
 しかし、その「行動」の責任は、最終的に選挙を通して問われることになります。
 日本国の「主権者」は国民ですから、日本国の政治行動は国民が決定する――そういう形がともかく確保できているわけです。
 それを「間接的」に行なっているのが、今の民主主義なのですね。

 重光葵は戦後の外務大臣を務めましたが、「天皇の外交官」という意識が抜けきれなかったようです。吉田茂は「臣茂」ですから……。
 そういう意識は、個人的な趣味の範囲に留めておいてもらいたかったのですが、現実にはそうは行きませんでした。新憲法が施行されて、「内奏」なんてものが存在する余地がなくなった時点でも、それが続き、実際に政治を左右していたようです。

 枝村前大使の話に戻ります。
 この人のこういう意識は、実はかなり根強いのではないかと思います。
 省の先輩から後輩へ、後輩からそのまた後輩へと受け継がれてきたのでなければ、新憲法以来数十年たっている現在にこういう人が生き残っているはずがありません。
 だいたい、普通に脳みそを働かせれば「外交は外務官僚の専権事項」なんてことは言えないでしょう。いちおう難しい試験に受かって「外交官」になったのだろうと推測されるわけですが、当たり前の思考能力が欠如しているとしか思えません。

 今の政治家に二世・三世が多いということはよく言われますね。実は、官僚もけっこう同じなのかも知れません。
 特に調べた訳ではありませんが、
  岡崎勝男→岡崎久彦
  東郷茂徳→東郷文彦→東郷和彦
 というような例があります。
 名前を失念しましたが、重光葵の息子も外務省ですね。
 こういうのが、案外多いような気がします。

 戦前は天皇のagentであった官僚が、戦後は国民のagentに変わったはずが、実はなかなか意識改革が出来ていない現実があるのではないでしょうか。。

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